物語

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阿吽香

「好きな人が出来たの。」 席についてすぐに話を切り出す私を、彼は静かな目で見ていた。周りは騒がしくなく、かといって静寂でもない。緩やかな喧噪と、暖かなコーヒーの香りが周囲を満たしていた。 しばらく沈黙が続いていたが、この小さな喫茶店の唯一の...
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五蘊盛苦(ごうんじょうく)

酒が俺の救いだった。仕事の面接では落とされ続け、もう長らく無職のままだ。何も考えたくないからテレビばかり見ている。流しっぱなし。頭には入っていない。何も考えられない。 酒を飲んでテレビを観る。頭が回らず、自分が無くなる、無になる。至福の時間...