PEAK~部活動戦略~【悩み】

「むーん・・・。」
末田(すえだ)リクは悩んでいた。5月の割には寒い日だったがその事ではない。高校入学して1か月が経つのにクラスメイトの友人が1人しかいないが、その事でもない。それは入部したバスケ部のことだった。
ここ土方高校は県内トップクラスの進学校でありながら、バスケ部も県内ベスト4常連の強豪校だ。
リクは中学時代、チームメイトの中では最もスキルフルであり、副キャプテンでエースだった。しかし、チームが弱小だったため最後の大会も1回戦で負けてしまい、悲しみの中引退した。
そういったこともあり、リクは高校は強豪校と呼ばれる高校に行こうと決めていた。成績も良かったため土方高校を受験、見事合格し意気揚々とバスケ部に入部し練習し始めたのだが・・・
「吐きそう・・・うぇ。」
入部初日の練習後の感想である。
中学と高校のもっとも大きな違い、それは練習の激しさだった。リクは弱小校といわれるだけあって練習の強度は低く、強豪校の高強度の練習についていけず、先制顔面パンチ(メリケンサック付き)を貰ったような気分だった。
「はあぁぁ・・・練習行きたくねぇなぁ・・・。」
嘆息しながらうな垂れている。入学して1か月で既に及び腰だ。
「そんなにきついわけ?バスケ部。」
「練習で吐いたのなんて初めてだよ。毎日練習後は体のどっかが痙攣してるわ。」
クラス唯一の友人である田中ロバートに独り言ちながら、昼飯のメンチカツパンをもそもそと頬張る弱気な及び腰くん。
「辞めたいとは思わないわけ?」
日本人父とアメリカ人母のハーフである友人から直球の質問をぶつけられ、リクは言い淀んだ。
正直リクはこれまでバスケを辞めたいと思ったことはなかったし、思うこともないと高を括っていた。しかし、バスケ人生初めての挫折を絶賛体験中のリクは、バスケ部を辞めることを少しだけ考えていた。
「・・・今のところは。」
友人から目を逸らしながら呟く。
「ふーん。」
半笑いでこちらを見つめる表情が癪に障る。
「なんだよ!」
「いやね、練習がキツいんだったら体力つければいいのにって思ってさ。」
「そんな簡単に体力ついたら苦労しねえんだよ。」
「・・・あるよ。」
昔の国民的弁護士ドラマに出てきたバーテンダーのようなセリフを吐くハーフ野郎。
「なにが?」
「簡単に体力付く方法。」
いつもながら鼻に突く半笑いを浮かべる友人を、あっけにとられて見つめる。ただその表情の中にいつもと違う、先達のような機微が漂っているのを感じた。
つづきはコチラ。
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